同じ20代でも、「第二新卒」に含まれることも多い20代前半と、30代を前にした20代後半では、転職難易度が異なると言われています。
では実際に20代前半と後半での転職をどちらも経験した人は、どのような違いを感じたのでしょうか。
そこで今回は、20代前半と後半の両方で転職経験がある143人にアンケートを実施。
「転職は20代前半と後半のどちらが大変だったか」や「20代前半と後半での転職先を選ぶポイントの違い」などについて調査しました。
- 調査対象:20代前半と後半の両方で転職経験がある方
- 調査期間:2024年8月27日~9月10日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:143人(女性87人/男性56人)
20代前半の転職理由1位は「仕事内容・業種を変えたい」
- 大学の専攻を生かして働きたかった(女性)
- 新卒で入社したものの、実際の仕事が自分の理想・スキルに合っていないと感じ、別の分野・業界に挑戦したいと考えた(男性)
- 人間関係が最悪で体を壊した(女性)
- より高い給与をもらえる会社に勤めたかった(男性)
- 休日の少なさ、業務負担の大きさが辛くなった(女性)
20代前半と後半の両方で転職経験がある143人に「20代前半の転職理由」を聞いたところ、1位は「仕事内容・業種を変えたい(29人)」でした。
以下、3位「待遇を改善したい(14人)」、4位「ワークライフバランスを整えたい(12人)」、5位「労働環境が過酷だった(10人)」の結果となっています。
「仕事への適性」「希望の給与」「実現したいライフスタイル」など、何らかのミスマッチがあり、転職を決意した人が多いとわかります。
日本企業は一定数の新卒社員を採用して、各部署に振り分けていくことが多いです。
そのため希望部署に配属されず、業務内容のミスマッチを起こす人も多いと考えられます。
「入社時とやりたいことが変わった」「5年間働いて、もっと広い世界があることを知り、他業界に興味をもった」など、一定の社会人経験を経てやりたいことが変わった人もいました。
また、ワークライフバランスや労働環境など、働きにくさに不満があった人も多いのが特徴です。
20代後半の転職理由1位は「待遇を改善したい」
- 業務がある程度できるようになってきたが、業務に見合った給与ではないと感じた(男性)
- 結婚し子どもが生まれ、家族との時間をできるだけとりたいと思い、家から近く長時間残業があまりないことを希望した(男性)
- 規模の小さい会社に勤めていたのでひと通りの業務はできるものの、より専門性を高めたいと考え、事業規模の大きい企業に転職した(男性)
- 人生を長い目で見たときに、生活を安定させるために転職が必要だと感じ転職しました。今後長く働くために、給与や休日の安定化などが必要と感じ転職しました(女性)
- 前職は空間デザイン・設計など自分自身が手を動かしていく業務でしたが、広告代理店やメーカーと仕事をしていくうちに、自分も企画提案やディレクションをしてみたいと思った(女性)
「20代後半の転職理由」の1位は「待遇を改善したい(38人)」。
2位「仕事内容・業種を変えたい(26人)」も多くなりました。
20代前半の転職理由に比べると、「転職によって叶えたいこと」や「求める変化」をより具体的に書いてくれた人が多くなっています。
また「労働環境やワークライフバランスの改善」「待遇改善」など20代前半と同じ項目も上位に入っていますが、より「長い目で人生を見つめたときにどうか」を意識した回答も多くなりました。
転職は20代後半のほうが大変
「20代前半と20代後半の転職はどちらが大変だったか」という問いには、「20代後半のほうが大変だった」と回答した人が多くなっています。
なお「どちらも大変ではなかった」と答えた人からは、「しっかり準備したから」「どちらも前向きな理由だったから」などの回答が寄せられました。
一方「どちらも大変だった」という人からは、「年齢に関係なく、新しい職場に行くのは大変」「資格や経験がなかった」といった声が寄せられています。
転職は20代前半のほうが大変だった理由
- あまり軸が定まっておらず、時間がかかってしまった(男性)
- 20代前半のときは転職先が決まっていないときに辞めてしまったので、退職後新しい仕事を探すのに苦労しました(男性)
- どのように転職活動を進めたらいいのかわからなかったから。またスキルもないので、アピールポイントが少なかった(女性)
- 経験が少ない中での転職となったため、転職理由などはかなり深堀りされました。またほぼ未経験だと、選べる仕事が少なかったです(女性)
- 社会人経験が浅く、選考でアピールできる内容が乏しかったため。また初めての転職で手探りだったうえ、自己分析なども不十分だったため(女性)
「初めての転職で、転職活動の進め方がわからなかった」という声と、「経験が浅くアピールできることが少なかった」という声が目立ちました。
転職活動の進め方がわからないと、自己分析が不十分になったり応募書類が上手に作成できなかったりして、非効率になってしまうこともあります。
「第二新卒」と呼ばれる20代前半だと、転職において専門的なスキルや経験を求められるケースは少ないと言われます。
しかし経験が少なすぎて苦労したという体験談も多くなりました。
転職は20代後半のほうが大変だった理由
- 20代で2回の転職は、理由を聞かれて困りました(男性)
- 20代後半ではすでに結婚していて、家庭の事情を考慮しながら転職先を探す必要があったため(女性)
- 歳を重ねているので経験やスキルが重要視されるなか、アピールできる資格もなかったため苦労しました(男性)
- 前半は「未経験でも正社員として働けそうならどこでもあり」と考えていたが、後半では自分に合う仕事を考えながら転職活動したため(男性)
- 20代前半だと応募できる求人が幅広く、面接にいっても対応が柔らかかった。一方20代後半だと、少し厳しめに見られたり応募できる求人が少なかったりした(男性)
20代後半の転職では、「20代前半よりも厳しく見られて苦労した」という声が多くなりました。
20代後半になると、求められるスキルや業務経験のレベルが高くなるからです。
20代で2回以上転職していることから、「長く勤められるのか疑われることが多かった」と言う体験談もありました。
また20代後半の転職ですと、転職者本人が転職先に求める条件も高くなったり、家族の事情を考慮する必要が出てきます。
本人の事情で、転職が難しくなりやすいこともわかりました。
20代前半と後半で転職先を選ぶポイントの違いは「ワークライフバランスを考えた」
最後に、「20代前半と後半での転職先を選ぶポイントの違い」を聞きました。
その結果、1位は「ワークライフバランスを考えた(41人)」、2位は2位「待遇をより重視(33人)」となりました。
ワークライフバランスや待遇など、20代後半の転職では働きやすさを重視した人が多くなっています。
なお「変化はない」と答えた人は13人で、多くの人は転職回数や年齢によって重視条件を変化させているとわかります。
1位 ワークライフバランスを考えた
- 家庭環境に影響が少ないかどうか(男性)
- 前半はとにかく自分の興味のある業界や職種を選びましたが、20代後半ではプライベートを重視して長い目線でキャリア形成ができる企業を選びました(女性)
- 前半では主にスキルアップや給料面を考えながら探しました。後半は結婚を機にした転職だったので、「結婚生活に影響するか」や「子どもができたときの働き方」などを考えながら探しました(女性)
1位は「ワークライフバランスを考えた」でした。
ワークライフバランスについては、女性からの回答が多くなっています。
とくに出産を考える女性は、産休・育休の取得や出産後の働き方などを見据えて、ワークライフバランスを重視する傾向にあると考えられます。
もちろん20代前半でワークライフバランスを整えたいという理由で転職した人もいますが、後半になるとより重視する人が多くなるとわかります。
2位 待遇をより重視
- 給与はあとで大切になってきた(男性)
- 20代前半は業務内容、後半は給与を重視しました(女性)
- 20代前半は経験がないので「どんなことでも頑張ろう」という気持ちだった。20代後半になると、経験も積み自分が求める環境や報酬が明確になった(女性)
2位は「待遇をより重視」でした。
20代後半になって給与を重視した理由は、「生活基盤を安定させるため」「スキルに見合った収入を得るため」などです。
国税庁の調査では、20代後半になると20代前半に比べ「性別」「企業規模」「業種」による年収差が広がってくることもわかっています。
※参考:国税庁「民間給与実態統計調査」
そのため20代後半を迎えて、「給与に対する不満」「給与水準の低い業界で働き続けることへの不安」を感じる人も多いと推測できます。
3位 仕事内容をより重視
- 20代前半は、福利厚生が充実している企業。後半はとりあえず自分ができそうな仕事を選びました(女性)
- 体力的にも最後のチャンスだと思い、バリスタに絞って転職活動しました。カフェで働くことが夢だったので(女性)
- 20代後半では、給与へのこだわりが少なくなりました。お金より「やりたい仕事ができるか」が大切になりました(男性)
3位は「仕事内容をより重視」です。
20代後半になって給与を重視するようになった人も多い一方で、「給与よりも仕事内容ややりがいを重視するようになった」という人もいました。
理由としては「20代前半は自分に向いている仕事をわかっていなかった」「20代前半はやりたくない仕事をしていた」などが挙げられています。
「やりたい仕事」「向いている仕事」と答えた人が多い一方で、「できそうな仕事」という回答もあり、無理をしたくないという考えで転職活動した人もいるとわかりました。
4位 長く働けるか考えた
- 20代後半は、「今度こそ一生働ける会社を選ぼう」という思いが強まりました(男性)
- 20代前半は、どれだけプライベートを優先できるか。20代後半は、自分に向いていて定年まで働けそうか(女性)
- 20代前半ではやりたいこと探しに重点を置き、後半ではやりたいことよりも長く働けるかに重点を置いていた(女性)
「長く働けるか考えた」が4位でした。
長く働くための具体的な条件としては、「勤務時間」「待遇」「雇用形態」「福利厚生」などが挙げられています。
30代を前にして、今後は落ち着いて働きたいと考える人も多いとわかりました。
「一生働ける会社」「定年まで働きたい」というコメントもあるように、20代後半で最後の転職にしたいと考えていた人もいます。
5位 人間関係を重視
- オープニングスタッフなど、人間関係が良好になりやすい環境(女性)
- コミュニケーションがうまくとれそうかなど、人間関係構築をより重視した(女性)
- 仲良くなれる人がいるかどうか。同じ立場の人が一人もいないのは辛かったので(女性)
5位は「人間関係を重視」です。
どの職場で働くうえでも、人間関係は大きな影響力をもちます。
一回目の転職で「同じ立場の人が一人もいない」などの辛さを経験し、人間関係を重視するようになった人もいました。
入社前に職場の人間関係を把握するのは難しいですが、「オープニングスタッフを募集している」「事業拡大で経験者採用を積極的に行っている」といった企業なら、同じ立場の人が多くなる可能性は高いです。
まとめ
20代後半の転職では、20代前半よりも求められるスキルレべルなどが高くなります。
そのため、20代後半のほうが転職は難しいと感じた人が多くなりました。
ただ20代後半の転職では「一度転職を経験して、転職活動の流れやポイントがわかっている」「経験を積み、自分の強みや希望が明確になっている」というメリットもあります。
20代後半での転職に難しさを感じる場合は、経験・スキルの棚卸や自己分析を深めるため、転職エージェントやハローワークに相談するのもおすすめです。