部下に「苦手な上司」がいるのと同じで、上司にとっても「苦手な部下」はいます。
上司も人間ですから、すべての部下と上手に付き合っていくのは難しく、苦手な部下ができてしまうのは当然です。
では上司はどんな部下を苦手と感じるのでしょうか。
今回は、職場に部下がいる418人にアンケートを実施し、「苦手な部下の特徴」について聞きました。
- 調査対象:職場に部下がいる人
- 調査期間:2024年12月22日~2025年1月5日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:418人(女性221人/男性197人)
- 回答者の年代:20代 18.9%/30代 33.3%/40代 27.5%/50代 18.4%/60代以上 1.9%
アンケート結果に対して、ヒトノビ代表の小関珠緒氏よりご考察いただきました。
【監修者プロフィール】
小関珠緒
学習院大学卒業後、実用書の編集者を10年経験し、フリーの編集者・ライターとして独立。その後、2012年にキャリアコンサルタントの資格を取得し、自身の仕事・転職・起業経験と、心理学・コーチングの学びを元に中小企業の社員育成業をスタートした。
「強みを生かし、ゆたかに生きる人を増やす。人を成長させるリーダーを増やす」という理念の元、中小企業向け女性スタッフの人材育成を専門としている。
人あたりのよさで本音を引き出し、相手の性格・強みに合わせて本質を突く指導が好評。
・ヒトノビ代表
・キャリアコンサルタント歴13年 相談件数 のべ約800名
・リテールベーカリー、薬局、クリニック、保育園、エステサロン、税理士事務所、特許事務所、デザイン設計会社など、対面接客業で女性スタッフが多く勤める中小企業を支援している。
【資格】
国家資格 キャリアコンサルタント
特定非営利活動法人 日本キャリア開発協会 CDA会員
一般社団法人 日本マインドセット協会(JMSET)認定インストラクター
職場に苦手と感じる部下がいる人は83.3%
職場に苦手と感じる部下がいるかを聞いたところ、「いる」と答えた人が8割を超えました。
部下が「上司が嫌い」「上司と合わない」と感じることも多いですが、上司側も部下に対して苦手意識をもっていることがわかります。
上司も部下も人間ですから、相性の合う合わないがあり、苦手意識をもつことは多いと考えられます。
性別ごとに見ても割合に大きな差はなく、男女とも部下との関係に悩んでいる人が多いとわかりました。
苦手と感じる部下の特徴1位は「報連相をしない」
苦手と感じる部下の特徴を聞いたところ、1位は「報連相をしない(16.3%)」でした。
2位「反抗的な態度をとる(12.2%)」、3位「上司を馬鹿にしている(8.1%)」、4位「自分の非を認めない(6.7%)」が続きます。
仕事の能力よりも、コミュニケーションのしにくさや性格によって、「苦手」と感じる上司が多いとわかりました。
仕事の能力が足りない点については、「部下だから」「若いから今後伸びてくるだろう」という理由で許容する上司も多いと推測できます。
1位 報連相をしない
- 要報告な仕事を報告せず進めてしまう。初めてやる仕事を自己判断で進めて間違える(30代 女性)
- 情報を共有しなかったり、報告が遅れたりなど、コミュニケーション不足の人です(40代 男性)
- 報連相をせず、上司が尻拭いをさせられる(50代 女性)
1位は「報連相をしない」です。
部下から報告や相談がないと、困っていることに気づけず、適切なサポートができません。
また上司への報連相がないまま自己判断で仕事を進められると、ミスやトラブルが発生しやすくなります。
問題発生後に上司が動くことになりがちで、知らないうちに大きくなってしまったトラブルの処理に苦慮する上司もいました。
2位 反抗的な態度をとる
- 反抗してくる。気が強すぎる(20代 女性)
- 反抗的で指示に従わない(30代 女性)
- 私に対して反抗的で、何かと文句を言い、不満があると私の上司にチクる(40代 男性)
2位は「反抗的な態度をとる」でした。
「上司の指示に従わない」「コミュニケーションが攻撃的」といった部下に悩んでいる人も多くなりました。
部下の性格に問題があるのかもしれませんし、指示の出し方や普段のコミュニケーションに問題があるのかもしれません。
いずれにしろ反抗的な態度が続くと、上司としては困ってしまいますし、精神的に追い詰められる可能性も。
指示に従ってくれないと、職場の統率がとれず、業務が滞ってしまうことも考えられます。
3位 上司を馬鹿にしている
- 部下が命令してきたり、馬鹿にしたような態度を見せたりする(40代 女性)
- うやまわない。タメ口を使うのも平気(50代 女性)
- 年上に対してもあまり尊重がない(60代以上 男性)
「上司を馬鹿にしている」が3位です。
7割近くが女性からの回答となっています。
女性上司は部下から「見下されている」「なめられている」と感じやすい傾向にあるとわかります。
馬鹿にされていると感じるポイントとしては、「タメ口」「馴れ馴れしい態度」「部下が指示してくる」などがありました。
上司を馬鹿にしていることが、反抗的な態度などにつながることも考えられます。
4位 自分の非を認めない
- 言い訳ばかりをする。自分が悪いと思わず、すべて環境などのせいにする(30代 女性)
- 指導や注意をすると言い訳ばかりする。謝らない(50代 男性)
4位は「自分の非を認めない」でした。
注意や指導をしたときに言い訳ばかりする部下に対し、うんざりしている上司も多いとわかりました。
自分の間違いを把握し、しっかり反省して次に生かそうという姿勢がないと、仕事の質は向上しにくいと考えられます。
上司も人間ですから、心情としても「ミスで迷惑をかけたのに、謝罪のひとつもないのか」と思ってしまうでしょう。
「謙虚さがないとダメ」というコメントもあり、真摯に反省する謙虚さが部下の成長に重要だと考えている人もいるとわかりました。
5位 人の話を聞かない
- 話を聞いておらず、うわの空(20代 女性)
- 人の話を聞かない、自分の意見を曲げない(30代 女性)
- 意見が合わないのはいいが、すり合わせしようとしないのは困る(40代 男性)
5位は「人の話を聞かない」となりました。
そもそも仕事に集中していなくて人の話を聞けていないパターンと、話の内容を受け入れないパターンがあります。
前者の場合は勤務態度として問題で、「上司は指示したつもりなのに、部下に伝わっていない」という問題につながりかねません。
また後者の場合、一般的に上司は部下よりも経験豊富ですので、「まず上司の話を聞き入れて実践してみてほしい」と感じる上司も多いのだと推測できます。
意見が合わないことはよくあるので許容するものの、お互いの話を理解し合おうとする姿勢がない部下に困惑している人もいました。
6位 自分で考えない
- 自分で考えずに、すぐに答えを聞いてくる部下(20代 男性)
- 言われたことしか仕事をしない。言わなかったら何もしない(40代 女性)
- 指示待ちで主体性に欠ける部下。自身の考えをもっていないとなお困る(50代 男性)
「自分で考えない」が6位です。
自己判断で突っ走ってしまう部下がいる一方、自分で物事を考えたり進めたりするのが苦手な部下もいます。
「ひとつひとつ指示しないと、作業を進められない」というコメントもあり、自分で考えてくれない部下がいると指示出しの負担が増えます。
報連相なく勝手に進めるのも、常に指示待ちや質問をするのも、上司にとっては負担だとわかりました。
7位 反応がない
- コミュニケーションをとっても、リアクションが薄い。仕事は問題なくできるが、コミュニケーションに興味がなさそうで、何を考えているのかわからない(30代 男性)
- 何を言っても反応が薄い。指示をしても理解・納得しているのかがわからない(40代 女性)
- とにかく何の話をしても反応がないのは苦手です(50代 男性)
「反応がない」が7位に入りました。
仕事の指示をしたときに部下から反応がないと、上司は「理解しているのかな」「任せて大丈夫かな」と不安になりがちです。
部下にとっても「大きな仕事を任せてもらいにくくなる」「信頼されにくくなる」というデメリットがあると言えます。
また雑談時に反応が薄いと、何を考えているかわからないと感じて会話がおっくうになり、コミュニケーションが減ってしまうこともあると考えられます。
部下との関係を良くするために上司が行っていることは「積極的なコミュニケーション」
部下との関係を良くするために上司が行っていることを聞いたところ、圧倒的1位は「積極的なコミュニケーション(40.4%)」でした。
2位は「話しやすい雰囲気をつくる(22.7%)」も多くなりました。
差が開いて、3位「適度な距離を保つ(7.9%)」、4位「丁寧に教える(7.7%)」が続きます。
積極的なコミュニケーションや話しやすい雰囲気づくりで、部下と会話する機会を増やそうとする上司が多いとわかりました。
また「感情的にならない」「よくほめる」などは、部下の感情に配慮した工夫です。
1位 積極的なコミュニケーション
- 苦手な人ほど声掛けをして、コミュニケーションをとるようにする(30代 女性)
- 世間話をしたり、定期的に私のおごりでラーメンなどを食べに行ったりする。しかし部下はそれらをうっとうしく思っているかもしれない(40代 男性)
- 自分からこまめに挨拶や声掛けをして、コミュニケーションをとる(50代 男性)
1位は「積極的なコミュニケーション」です。
苦手な部下にも積極的に声をかけたり面談の機会を設けたりして、コミュニケーションを図っている上司が多いとわかりました。
具体的には「食事に誘う」「世間話をしてみる」などがあります。
ただ「積極的に話すようにしているが、なかなか部下の本音が見えない」「愚痴を聞いたり差し入れしたりしているが、効果がない」など、事態が改善していない例も。
それでも「コミュニケーションを諦めるわけにはいかない」と、声掛けを続けている上司もいました。
2位 話しやすい雰囲気をつくる
- 「いつでも何でも聞いて」というスタンスでいること(30代 女性)
- 部下の意見を聞くように心掛けている(40代 男性)
- 相談しやすい雰囲気をつくっている(50代 女性)
2位は「話しやすい雰囲気をつくる」でした。
具体的には「話をもちかけられたときに、しっかり聞く」「積極的に部下の意見を聞いたり受け入れたりする」「フレンドリーな態度や会話」などです。
とくに聞く姿勢に留意している人が多くなりました。
部下が「話を聞いてくれる上司だ」「意見を受け入れて、改善に生かしてくれる上司だ」と思えば、部下からのコミュニケーションも活発になると期待できます。
3位 適度な距離を保つ
- 必要以上に近づかず、最低限の対応。関わりをもたないようにする(30代 女性)
- 仕事で困っていそうなときは話しかけるようにしているが、必要以上に働きかけてウザがられると困るので、必要最低限に絡むようにしている(40代 男性)
- 少し距離を置いて、様子を見て接する(50代 女性)
「適度な距離を保つ」が3位です。
あまり干渉したり話しかけたりせずに、必要なときだけ部下と関わるようにしている上司も多いとわかりました。
とくに「態度が悪い」「自己主張が強すぎる」など、性格面に難がある部下に対して距離を置く上司が多くなっています。
部下と関わりたくないという消極的な理由だけで距離を置いた人だけではなく、「干渉を嫌う部下が機嫌良く仕事できるように」という配慮から距離を保っている上司もいます。
4位 丁寧に教える
- 何度も最初と同じ気持ちで説明する(30代 女性)
- わからないことを根気強くひとつずつ教える(30代 女性)
- だぶんできるであろう内容の仕事でも、マンツーマンでで教育をします(40代 男性)
4位は「丁寧に教える」でした。
「苦手な部下だから」「ミスやうっかりが多い部下だから」と放置せず、丁寧な指導を心掛けている上司もいます。
放置してしまうと部下が成長できなかったり、業務に支障が出たりするからですね。
「メモしなくて忘れっぽい部下がいて、覚えやすさに特化した教え方をしている」など、部下に合わせて指導法を変えているなどの工夫も寄せられました。
5位 適度に進捗確認をする
- 部下がやっている仕事の進捗状況をこまめに確認する(30代 女性)
- 機嫌の良さそうなときに進捗具合を聞いておく(40代 女性)
- 仕事をまかせきりで放置せず、途中経過もさりげなくチェック(50代 男性)
5位は「適度に進捗確認をする」となりました。
報連相をしない部下や仕事が遅い部下に対して、進捗確認や進捗管理を心掛けている上司もいます。
状況を適宜確認することで、トラブルの芽が見つかったらフォローを入れられるからですね。
また「予定より進みが遅いな」と感じたら、別の部下に仕事を割り振ったり自分がサポートに入ったりできるので、納期に遅れる事態を避けられる可能性も高まります。
朝礼時に業務予定を確認などして、部下にスケジュールや納期を意識させている人もいました。
特定の部下ではなくチーム全体に対して確認・管理を行うと、個人攻撃にならないので、プライドの高い部下の機嫌を損ねにくいと考えられます。
6位 感情的にならない
- 丁寧に聞き取り、ダメなことであれば理由も含めて説明する。その際怒りに任せて怒るのではなく、優しく伝えることを心掛ける(20代 女性)
- なるべく冷静な態度で接しています(30代 女性)
- 何か注意や指示をするときには事実のみを言い、人格を否定するようなニュアンスのことは一切言わない。部下がしたミスの指導をする際も、感情的にならないようにしています(50代 男性)
「感情的にならない」が6位です。
指導しても反抗的な態度をとる部下や、上司を馬鹿にしてくる部下に対しては、上司もついイラっとしてしまうと考えられます。
上記のような場合でも、できるだけ冷静に接するよう心掛けている人もいました。
感情的に指導したり言い返したりしてしまうと、ますます人間関係がこじれる可能性もあるからですね。
「冷静になれない」「自分には扱えない」と感じた場合には、さらに上の上司に相談している人もいます。
相談相手がいることで冷静さを取り戻せることもわかりました。
7位 よくほめる
- 感謝の気持ちを伝えたり、努力や成果を認めたりする(30代 女性)
- アドバイスや指示などの際に、必ずいいところを伝える。みんなの前で些細なところもほめて、チーム全体の承認欲求を満たしている(40代 男性)
- いいところは積極的にほめる(50代 男性)
「よくほめる」が7位に入りました。
部下の承認欲求を満たして気持ちよく仕事してもらうために、できるだけ部下を認めてほめるよう心掛けている上司もいます。
部下の性格や趣味を考慮して、仕事内容ではなく持ち物やメイクをほめるようにしているという人もいました。
頑張ったことを認められれば、部下は「この上司は自分のことをしっかり見てくれている」と感じ、信頼を寄せるようになると期待できます。
調査結果のまとめに対する小関珠緒氏からの総括コメント
コミュニケーションに難がある部下や反抗的な部下については、苦手と感じる上司が多くなりました。
ただ苦手な部下を無視したり放置したりしていては仕事が進みませんし、「上司としての仕事をしていない」と言われかねません。
そのため積極的にコミュニケーションを図ったり指導法を工夫したりして、部下との関係を良くしようと心掛けている上司も多くなっています。
中には「粘り強く指導していたが、部下が変わらなくてもう諦めた」という声もありました。
ただやる前から諦めずに、まずは働きかけてみることが大切だと考えられます。
最後に総括として、小関珠緒氏からコメントをいただきました。
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上司は、適切なコミュニケーションが取れない部下が苦手だと分かります。
このような部下は、能力が高かったとしても信頼関係を築きにくく、チームをまとめるのが難しくなるからでしょう。
関係をよくするために上司は積極的な声掛けをしたり話しやすい雰囲気をつくったりと、苦労がうかがえます。
こちらは海軍軍人・山本五十六の名言です。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」
「言って聞かせる」「褒める」「耳を傾ける」「承認する」「任せる」などは、まさにアンケートの上司の行動ズバリです。
時代は変わっても、人を育てる方法は同じなのですね。
「感謝で見守る」「信頼する」を意識すると、さらに良好な関係が構築できそうです。